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大阪地方裁判所 平成6年(行ウ)99号 判決 1997年11月27日

大阪市北区本庄東二丁目四番二-九四五号

原告

東邦建設株式会社

右代表者代表取締役

広瀬純

右訴訟代理人弁護士

的場智子

松原伸幸

大阪市北区中津一丁目五番一六号

被告

大淀税務署長 粟津進

右指定代理人

種村好子

加藤英二郎

石田嘉博

長田義博

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が平成四年三月三一日付「青色申告の承認の取消通知書」をもって原告の昭和六二年八月一日から昭和六三年七月三一日までの事業年度以降の法人税の青色申告の承認を取り消した処分を取り消す。

2  被告が平成四年三月三一日付「法人税額等の更正決定通知書及び加算税の賦課決定通知書」をもって原告の昭和六二年八月一日から昭和六三年七月三一日までの事業年度の法人税について法人税額等を更正し、重加算税を賦課した更正及び加算税の賦課決定処分を取り消す。

3  被告が平成四年八月二五日「法人税額等の更正決定通知書及び加算税の賦課決定通知書」をもって原告の平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度の法人税について法人税額等を更正し、過少申告加算税及び重加算税を賦課した更正及び加算税の賦課決定処分(平成四年一二月二二日付異議決定で一部取り消された後のもの)を取り消す。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、青色申告の承認を受けた株式会社である。

2  原告は、昭和六二年八月一日から昭和六三年七月三一日までの事業年度(以下「昭和六三年七月期」という。)及び平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度(以下「平成二年七月期」という。)の各法人税につき、別紙1の「確定申告」欄記載のとおり確定申告し、その後、平成二年七月期の法人税につき、別紙1の「修正申告」欄記載のとおり修正申告した。

3  これらに対し、被告は、平成四年三月三一日付で、昭和六三年七月期以降の法人税の青色申告の承認を取り消すとともに、昭和六三年七月期及び平成二年七月期の各法人税につき、別紙1の「更正処分(1)」欄記載のとおり更正及び重加算税の賦課決定をした。なお、平成二年七月期の法人税については、被告は、平成四年八月二四日付で右各処分を取り消すとともに、同月二五日付で別紙1の「更正処分(3)」欄記載のとおり更正並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定をした。

4  原告は、被告が平成四年三月三一日付でした青色申告承認の取消処分(以下「本件取消処分」という。)並びに昭和六三年七月期の法人税についての更正(以下「本件更正(一)」という。)及び重加算税の賦課決定(以下「本件賦課決定(一)」という。)、被告が平成四年二五日付でした平成二年七月期の法人税についての更正並びに重加算税及び過少申告加算税の賦課決定のそれぞれにつき、被告に対する異議申立て、次いで、国税不服審判所長に対する審査請求をした。その経緯は、別紙1の「異議申立て」、「異議決定」、「審査請求」及び「裁決」の各欄記載のとおりである(なお、平成二年七月期の法人税については、原告の異議申立ての結果、右の「異議決定」欄記載のとおり処分の一部が取り消された。以下、平成二年七月期の法人税についての右一部取消後の更正を「本件更正(二)」、重加算税及び過少申告加算税の賦課決定を「本件賦課決定(二)」という。)。

5  しかしながら、

(一) 本件取消処分は、その要件を欠く点において違法であり、かつ、その手続の点においても、被告の職員が予告なしい原告の本社事務所を訪れ、調査理由の告知もしなかったこと、原告が調査に協力する姿勢を示していたにもかかわらず、いきなり取引先等に対する反面調査を実施したことなどの違法がある。

(二) 本件更正(一)、(二)は、いずれも更正の理由が付記されていない点、並びに、原告の所得金額及び土地譲渡利益を過大に認定した点において違法である。

(三) 本件賦課決定(一)、(二)は、右のとおり違法な更正を前提とする点において違法であり、かつ、原告に課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠蔽、仮装の事実はなく、さらに、本件賦課決定(二)については国税通則法六五条四項所定の正当な理由の存在も認められる点において違法である。

6  よって、原告は、本件取消処分、本件更正(一)、(二)及び本件賦課決定(一)、(二)の各取消しを求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1ないし4の事実は認める。

2  同5のうち、本件更正(一)、(二)のいずれも更正の理由が付記されていないことは認め、その余は争う。なお、本件取消処分により、原告から提出された昭和六三年七月期以降の申告書はいずれも青色申告書以外の申告書とみなされるから、本件更正(一)、(二)に当たって更正の理由を付記しなかったことに違法はない。

3  本件取消処分の適法性について

原告は、後記4(一)(1)記載のとおり、昭和六二年一一月二五日、池田市畑五丁目一番五四の山林「以下「畑五四の山林」という。)をダイエー通商株式会社に代金二億六九一〇万円で売り渡し、右代金から同土地の取得原価二億一九七六万五〇〇〇円及び売買に要した費用六七二万円を控除した四二六一万五〇〇〇円の譲渡利益を得た。

原告は、右譲渡利益金額のうち、四〇〇〇万円を相互信用金庫天六支店の広瀬一也名義の普通預金口座に入金し、いわゆる借名預金を利用して取引事実を隠蔽した上、この売買取引を会計帳簿にも記載せず、昭和六三年7月期の法人税の確定申告書において右譲渡利益を除外していた。この事実は、法人税法一二七条一項三号所定の事由に該当するから、被告は、原告に対し、本件取消処分をしたものである。

4  本件更正(一)の適法性について

(一) 所得金額

原告の昭和六三年七月期の所得金額は、原告の申告に係る所得金額一三六万八七九四円に、申告から漏れていた次の(1)、(2)の金額を加えた合計四五九八万三七九四円である。

(1) 畑五四の山林の譲渡利益(四二六一万五〇〇〇円)

原告は、畑五四の山林を昭和六二年四月三〇日に喜多泰宏から二億一九七六万五〇〇〇円で購入し、同年一一月二五日、ダイエー通商に二億六九一〇万円で売り渡した。この売買による原告の利益は、二億六九一〇万円から取得原価の二億一九七六万五〇〇〇円及び仲介料として支払った六七二万円を控除した四二六一万五〇〇〇円である。

(2) 池田市畑五丁目一番一一、同番一五、同番一六の山林(以下「畑一一、一五、一六の山林」という。)の譲渡利益(二〇〇万円)

原告は、畑一一、一五、一六の山林を昭和六三年五月二〇日に喜多泰宏から一億八〇九一万九二〇〇円で購入し、同日、ダイエー通商に一億八九三九万二〇〇〇円で売り渡した。この売買による原告の利益は、一億八九三九万二〇〇〇円から取得原価の一億八〇九一万九二〇〇円及び仲介料として支払った六四七万二八〇〇円を控除した二〇〇万円である。

(二) 土地譲渡利益金額

原告の昭和六三年七月期の土地譲渡利益金額は、次の(1)ないし(3)の金額の合計七九五一万八五四七円である。

(1) 箕面市白鳥一-三五〇-一の雑種地(三七八六万九四〇七円」

右雑種地の譲渡等に係る収益の額は五一五〇万円であり、これから、原価の一三二九万八一四〇円、法定の負債利子一九万九四七二円、法定の販売費及び一般管理費一三万二九八一円を控除すると、土地譲渡利益金額は三七八六万九四〇七円となる。

(2) 畑五四の山林(三四六八万四〇〇〇円)

畑五四の山林の譲渡等に係る収益の額は二億六九一〇万円であり、これから、原価の二億一九七六万五〇〇〇円、法定の負債利子八七九万〇六〇〇円、法定の販売費及び一般管理費五八六万〇四〇〇円を控除すると、土地譲渡利益金額は三四六八万四〇〇〇円となる。

(3) 畑一一、一五、一六の山林(六九六万五一四〇円)

畑一一、一五、一六の山林の譲渡等に係る収益の額は一億八九三九万二〇〇〇円であり、これから、原価の一億八〇九一万九二〇〇円、法定の負債利子九〇万四五九六円、法定の販売費及び一般管理費六〇万三〇六四円を控除すると、土地譲渡利益金額は六九六万五一四〇円となる。

(三) よって、本件更正(一)は適法である。

5  本件更正(二)の適法性について

(一) 所得金額

原告の平成二年七月期の所得金額は、原告の申告に係る所得金額△八九二八万二〇九一円(所得金額の前に△があるときは欠損金額を示す。以下同じ。)に、申告から漏れていた次の(1)ないし(4)の金額を加えた合計三億四九八九万一〇〇九円である。

(1) 池田市畑五丁目一番九の山林(以下「畑九の山林」という。)の譲渡利益(一億〇二八〇万円)

原告は、畑九の山林を平成二年三月六日に谷田又造から二億七二九五万円で購入し、同年四月一三日、ドリー産業株式会社に三億七五七五万円で売り渡した。この売買による原告の利益は、三億七五七五万円から取得原価の二億七二九五万円を控除した一億〇二八〇万円である。

(2) 池田市畑三丁目一番一〇、同番六〇の山林(以下「畑一〇、六〇の山林」という。)の譲渡利益(一億一四八四万円)

原告は、畑一〇、六〇の山林を平成二年二月六日に荒木柾夫から二億〇四一六万円で購入し、同年四月一〇日、ドリー産業に三億一九〇〇万円で売り渡した。この売買による原告の利益は、三億一九〇〇万円から取得原価の二億〇四一六万円を控除した一億一四八四万円である。

(3) 箕面市白鳥二五番の雑種地(以下「白鳥二五の雑種地」という。)及び白鳥二六番一、二七番一、二八番一の雑種地(以下「白鳥二六ほかの雑種地」という。)の譲渡利益(二億一二〇五万三一〇〇円)

原告は、白鳥二五の雑種地を平成二年七月三一日に兵庫一雄から五億三四八一万四〇〇〇円で、白鳥二六ほかの雑種地を同年六月二七日に印藤政治ほか一名から一億三七一二万七九〇〇円でそれぞれ購入し、同年七月三一日、これらを合わせて、株式会社メディアスに九億〇四八三万五〇〇〇円で売り渡した。この売買による原告の利益は、九億〇四八三万五〇〇〇円から取得原価の五億三四八一万四〇〇〇円及び一億三七一二万七九〇〇円、遅延利息として支払った五四万円並びに仲介料として支払った二〇三〇万円を控除した二億一二〇五万三一〇〇円である。

(4) 売買契約に係る違約金(九四八万円)

原告は、平成元年一〇月二〇日、田端博ほか一名との間で箕面市粟生間谷西七丁目一九七一番二六二の土地建物(以下「粟生間谷の土地等」という。)を買い受ける旨の契約を締結し、同月二三日、田端ほか一名に対し手付金として九四八万円を支払ったが、売主側の都合で右契約が解除されたため、平成二年一月二九日、田端ほか一名から右手付金の返還を受けるとともに、これと同額である九四八万円の違約金を受領した。右受領した違約金九四八万円は原告の収益となる。

二  土地譲渡利益金額

原告の平成二年七月期の土地譲渡利益金額は、次の(1)ないし(4)の金額の合計四億三七七一万九一五三円である。

(1)  函館市深堀町の土地建物(四九六万三八〇〇円)

原告は、右土地建物を平成元年五月三一日、有限会社緑町エステートに一六〇〇万円で売り渡した。右金額のうち、土地の譲渡による収益の額は一三五四万三〇〇〇円となり、これから、原価の八〇四万三〇〇〇円、法定の負債利子三二万一七二〇円、法定の販売費及び管理費二一万四四八〇円を控除すると、土地譲渡と利益金額は四九六万三八〇〇円となる。

(2)  畑九の山林(九八二五万〇八三三円)

畑九の山林の譲渡等による収益の額は三億七五七五万円であり、これから、原価の二億七二九五万円、法定の負債利子二七二万九五〇〇円、法定の販売費及び一般管理費一八一万九六六七円を控除すると、土地譲渡利益金額は九八二五万〇八三三円となる。

(3)  畑一〇、六〇の山林(一億〇九七三万六〇〇〇円)

畑一〇、六〇の山林の譲渡等による収益の額は三億一九〇〇万円であり、これから、原価の二億〇四一六万円、法定の負債利子三〇六万二四〇〇円、法定の販売費及び一般管理費二〇六万一六〇〇円を控除すると、土地譲渡利益金額は一億〇九七三万六〇〇〇円となる。

(4)  白鳥二五の雑種地及び白鳥二六ほかの雑種地(二億二四七六万八五二〇円)

白鳥二五の雑種地及び白鳥二六ほかの雑種地(以下、併せて「白鳥地区の雑種地」という。)の譲渡等による収益の額は九億〇四八三万五〇〇〇円であり、これから、原価の六億七二四八万一九〇〇円、法定の負債利子四五五万〇七四八円、法定の販売費及び一般管理費三〇三万三八三二円を控除すると、土地譲渡利益金額は二億二四七六万八五二〇円となる。

(三) よって、本件更正(二)は適法である。

6 本件賦課決定(一)、(二)の適法性について

(一) 重加算税の賦課決定について

原告は、前述した取引のうち、畑五四の山林、畑一一、一五、一六の山林、畑九の山林及び畑一〇、六〇の山林(以下、全部併せて「畑地区の山林」という。)に係る取引については原告の会計帳簿に記載せず、かつ、仮名又は借名預金口座等を利用してその取引事実を隠蔽し、違約金の受領についても、真実の取引内容と異なる合意書を作成し、仮名の預金口座を利用してその事実を隠蔽し、これらに係る利益を除外した法人税の確定申告書を提出した。これらは、国税通則法六八条一項所定の事由に該当する。そこで、被告は、本件更正(一)、(二)に伴い、同項に基づいて計算した金額を重加算税として賦課決定したものである。

(二) 過少申告加算税の賦課決定について

被告は、本件更正(二)に伴い、右(一)の重加算税の対象とされた税額以外の税額を原告が過少に申告したことについて、賦課決定をしたものである。

(三) よって、本件賦課決定(一)、(二)も適法である。

三  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張のうち、5(二)(1)の事実及び箕面市白鳥所在の雑種地の取引主体が原告であることは認め、その余は争う。

2  被告が指摘する土地売買取引のうち、畑地区の山林の売買は、いずれも原告代表者個人名義で行われており、実質上も原告代表者個人の取引であって、原告の取引ではない。したがって、右山林の売買取引による収益は原告に帰属しない。

3  畑地区の山林及び白鳥地区の雑種地の売買取引は、ともに単なる個別の土地売買を目的とするものではなく、大規模な宅地開発計画の下に、右各土地を含む一団の土地を買収することを目的としているものである。右各土地については、形式上原告又は原告代表者個人から第三者への転売があったものとされているが、これは、開発資金の融資及び資金提供者の権利保全のために売却という形式が用いられたにすぎず確定的に売買が成立したものではない。また、右のように大規模な宅地開発計画の一貫として行われた土地売買においては、全体の開発が修了した時点で初めて収益が確定することになるから、個別物件ごとの引渡しの時期を収益の計上時期とみることもできない。本件においては、両地区とも開発行為は完了しておらず、前記各土地の売却は形式だけのものであるから、取引主体が原告であれ原告代表者個人であり、被告が指摘する土地取引による収益は未だ発生していない。

4  粟生間谷の土地等の売買は、田端ほかと寺嶋貞夫との取引であって、原告の取引ではなく、違約金九四八万円も寺嶋が取得したものである。

四  被告の再反論

1  畑地区の山林の取引が原告に帰属することは、次の各事業からも明らかである。

(一) 原告は、不動産売買を主要な事業内容としていて、宅地建物取引業者の免許も取得しており、畑地区の山林の取引は、原告が設立された昭和六二年四月二三日以後に行われている。

(二) 原告の事業は、ほとんど原告代表者の判断で運営されている。

(三) 原告代表者は、所轄税務署長に対する開業等の届出書を提出しておらず、宅地建物取引業者の免許も取得していないほか、個人の所得税の確定申告及び個人事業に関する帳簿書類等の備付け、保存の事実も認められないなど、原告代表者個人が不動産売買業を営んでいたことを示す事実はない。また、原告が設立される前に、原告代表者が個人事業として前記山林取引の準備をしていた形跡もない。

2  土地等の譲渡に係る収益の計上時期については、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金に算入し、右の引渡しの日がいつであるかについては、当該資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じ、その引渡しの日として合理的であると認められる日を指すものと解されており、引渡しの日が不明なときは、代金の相当部分を収受するに至った日又は所有権移転登記の申請をした日のうち、いずれか早い日であると解するのが相当である(法人税基本通達参照)。右を前提にすれば、前記二で述べたとおり、畑五四の山林及び畑十一、十五、十六の山林の譲渡利益は昭和六三年七月期の、畑九の山林、畑一〇、六〇の山林、白鳥地区の雑種地の譲渡利益は平成二年七月期の各益金に算入すべきものである。

3  粟生間谷の土地等の売買契約は、寺嶋貞夫名義で行われているが、現実に手付金を支払い、かつ、違約金等を受領したのは原告である。したがって、右売買契約における実質上の買主は原告であり、違約金も原告に帰属するものというべきである。

第三証拠

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1ないし4の事実は、当事者間に争いがない。

二  畑地区の山林の取引について

1(一)  乙第一、一七ないし一九号証によれば、畑五四の山林につき、売主を喜多康宏、買主名義を「広瀬建設工業広瀬純」として、昭和六二年四月三〇日、代金二億一九七六万五〇〇〇円で売買契約が締結されたこと、同年一一月二五日、売主名義を「広瀬建設工業広瀬純」、買主をダイエー通商として代金二億六九一〇万円で売買契約が締結され、同日受付により、喜多からダイエー通商へ中間省略の方法で所有権移転登記手続がされたこと、ダイエー通商は、同日、右売買代金全額を支払ったことが認められる。

(二)  乙第二ないし四、二〇ないし二二号証によれば、畑一一、一五、一六の山林につき、売主を喜多、買主名義を「広瀬建設工業」として、昭和六三年五月二〇日ころ、代金一億八〇九一万九二〇〇円で売買契約が締結されたこと、同日、売主名義を「広瀬建設工業広瀬純」、買主をダイエー通商として代金一億八九三九万二〇〇〇円で売買契約が締結され、同日受付により、喜多からダイエー通商へ中間省略の方法で所有権移転登記手続がされたこと、ダイエー通商は、同日、右売買代金全額を支払ったことが認められる。

(三)  乙第五、二三、二四、五三及び五四号証によれば、畑九の山林につき売主を谷田又造、買主名義を「広瀬建設工業」として、平成二年三月六日、代金二億七二九五万円で売買契約が締結されたこと、同年四月一三日、売主名義を「広瀬建設工業」、買主をドリー産業として代金三億七五七五万円で売買契約が締結され、同日受付により、谷田からドリー産業へ中間省略の方法で所有権移転登記手続がされたこと、ドリー産業は、同日までに、右売買代金全額を支払ったことが認められる。

(四)  乙第六、七、二五、二六、五五及び五六号証によれば、畑一〇、六〇の山林につき、売主を荒木柾夫、買主名義を「広瀬建設工業」として、平成二年二月六日、代金二億〇四一六万円で売買契約が締結されたこと、同年四月一〇日、売主名義を「広瀬建設工業」、買主をドリー産業として代金三億一九〇〇万円で売買契約が締結され、同日受付により、荒木からドリー産業へ中間省略の方法で所有権移転登記手続がされたこと、ドリー産業は、同日までに、右売買代金全額を支払ったことが認められる。

2  売買取引の帰属について

(一)  前記のとおり、畑地区の山林の売買取引は、いずれも「広瀬建設工業広瀬純」又は「広瀬建設工業」の名義で行われたものであるところ、原告は、右売買取引はいずれも原告代表者個人に帰属する旨主張し、原告代表者は右主張に沿う供述をし、甲第五〇号証(原告代表者の陳述書)にも同趣旨の記載がある。また、甲第三号証の1、2、第四号証の2及び第五〇号証によれば、「広瀬建設工業」の名称は原告代表者個人が用いていた屋号であることが認められるほか、甲第九ないし三六号証によれば、右売買取引に係る国土利用計画法に基づく大阪府知事への届出も原告代表者個人名義で行われていること、右売買取引に際して関係者から交付された代金、手付金、手数料及び謝礼金等の領収証の名宛人も「広瀬建設工業」となっていることがそれぞれ認められる。

(二)  しかしながら、

(1) 原告は、不動産の売買を主要な事業目的のひとつとして原告代表者が昭和六二年四月二三日に設立した株式会社であるところ、畑地区の山林の前記売買取引は、すべて原告が設立された以降に行われたものである(甲第五、五〇号証、弁論の全趣旨)。

(2) 原告の従業員としては、事務員一名のほか建築土木作業に従事する従業員二名がいるだけであって、原告が行う不動産売買の業務については、営業活動や資金管理等そのほとんどが原告代表者ひとりの判断で運営されてきた(甲第五〇号証)。

(3) 「広瀬建設工業」の肩書きを付した原告代表者個人の名刺に印刷されている電話番号に係る電話料金は、原告の預金口座から振替支払されており(甲第四号証の2、乙第四二、五二号証)、また、原告は、少なくとも平成元年八月から平成三年七月にかけて、連日のように車のガソリン代、食事代やゴルフプレー料等の諸経費を支払っている(乙第五〇、五一号証)。

(4) 原告の主要な取引先であった和興建設株式会社のもと代表取締役においても、原告としての営業と原告代表者個人の営業との識別はできておらず、取引の際に「広瀬建設工業」、「東邦建設株式会社」等いかなる表示を用いるかについては原告代表者の指示に従っていたにすぎない(証人岡本圭司)。

(5) 原告代表者は、現在に至るまで、個人として所得税の確定申告等をした事実がなく、また、前記売買取引に関する領収証を除き、個人事業に関する帳簿書類や原始記録等の作成、保存もしていない(甲代五〇号証、原告代表者)。

(6) 原告代表者の自宅である尼崎市水明町一〇-四所在の建物には、少なくとも平成四年八月二一日当時、「広瀬」と表示された郵便受けがあるだけで、「広瀬建設工業」その他個人事業所であることを示す表示や物件は存在していなかった(検乙第一、二号証。なお、検甲第一ないし三号証によれば、右建物の郵便受けに「広瀬建設工業」の表示があることが認められるけれども、右は本件訴訟提起後である平成七年九月二十四日に撮影された写真であって、それ以前の状況を明らかにするものではない。)。

(7) 前記売買取引は、宅地造成等を目的としているものであるところ、原告は、これらに必要な宅地建物取引業者の免許を取得しているのに対し、原告代表者個人は、右免許を取得していない(甲第八号証、原告代表者)。

以上のとおり、原告が設立された以降、原告の営業と「広瀬建設工業」の営業とが截然と分離されていた事実はなく、原告の営業は原告代表者ひとりによって運営され、その際の取引に係る経費等の支払は原告が行っていた上、原告の営業とは別に原告代表者による個人事業が存在した形跡は窺われないのであるから、原告設立後に行われた畑地区の山林の売買取引はすべて原告に帰属するものと認めるのが相当である。

3  収益の計上時期について

原告は、畑地区の山林の売買は大規模な宅地開発計画の下に一団の土地を買収することを目的としているものであり、第三者への転売は開発資金の融資に伴う担保を目的とするもので確定的に売買が成立したわけではない、また、全体の開発行為が完了していない現時点では未だ原告に収益が発生していない旨主張するところ、甲第四九号証の1ないし9、第五〇号証及び原告代表者尋問の結果によれば、右売買が付近一団の土地の買収及び宅地開発を目的とするものであることが認められる。

しかしながら、右売買が実質的には担保目的で行われたものにすぎないことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、証人岡本の証言によれば、池田市畑地区における宅地開発等の事業主体はダイエー通商(その後、同会社の資金繰りの悪化によりドリー産業に変更された。)であって、いったんダイエー通商へ所有権移転登記された山林が将来原告ないし原告代表者個人名義に移転登記されることは予定されていなかったことが認められるから、右売買が担保目的で行われた形式上のものにすぎないということはできない。そしてまた、畑地区の山林の売買が一団の土地の宅地開発の一部であるからといって、全体の開発行為の完了時まで右売買による収益が発生しないということもできないのであって、前記認定のとおり、原告は、ダイエー通商又はドリー産業に売り渡した各山林につき、いずれも買主に対する所有権移転登記手続を完了するとともに、買主から代金全額を受領しているのであるから、右各山林の売買による原告の収益は、それぞれの所有権移転登記手続及び代金全額の授受を了した日の属する事業年度に算入すべきものであると解するのが相当である。

よって、原告の前記主張は採用することができない。

三  白鳥地区の雑種地の取引について

1  乙第八ないし一五、二七ないし二九、五七ないし六〇号証によれば、原告は、白鳥二五の雑種地を兵庫一雄から平成二年七月三一日、代金五億三四八一万四〇〇〇円で、白鳥二六ほかの雑種地を印藤政治ほか一名から同年六月二七日、代金一億三七一二万七九〇〇円でそれぞれ購入したこと、原告は、白鳥二五の雑種地と白鳥二六ほかの雑種地(白鳥地区の雑種地)を併せて、同年七月三一日、メディアスに代金合計九億〇四八三万五〇〇〇円で売り渡し、同日受付により、原告からメディアスへ所有権移転登記手続がされたこと、原告は、同日までにメディアスから右代金全額の支払を受けたことが認められる。

2  収益の計上時期について

原告は、畑地区の山林の場合と同様、白鳥地区の雑種地についても、メディアスへの転売は開発資金の融資に伴う担保を目的とするもので、確定的に売買が成立したわけではない、また、全体の開発行為が完了していない現時点では未だ原告に収益が発生していない旨主張するところ、甲第四〇号証の1、2、第四二ないし四五号証によれば、白鳥地区の雑種地の売買は、付近一団の土地の買収、宅地開発を目的とするものであったこと、原告とメディアスとの間において、これらの土地の売買が未だ成立していないことを確認する旨の確認書が平成四年二月三日付で交わされていることが認められる。

しかしながら、乙第八、一〇、一二及び一四号証によれば、白鳥地区の雑種地には、メディアスへ所有権移転登記された後、同会社の債務のみならず、同会社の代表者である十川紘一を債務者とする根抵当権が設定されており、さらに、平成五年九月以降同会社の債権者による差押えがされていることが認められるところ、それにもかかわらず、原告とメディアスとの間で右の問題を処理、解決するための話合いがされた形跡はないこと、原告とメディアスとの間で前記確認書が交わされたのは、両者間の売買契約締結から約一年半を経過した時期であって、その作成に至る事情等も明らかでないこと(ちなみに、甲第五〇号証によれば、原告に対する税務調査は平成四年一月二十三日から実施されていることが認められ、右確認書はその直後に作成されたことになる。)に照らすと、前記確認書の記載内容は信用することができず、他に原告からメディアスへの売買が形式上のものにすぎないことを認めるに足りる証拠もない。そうすると、前記認定のとおり、原告は、白鳥地区の雑種地につき、平成二年七月三一日、メディアスに対する所有権移転登記手続を完了するとともに、同日までに同会社から代金全額を受領しているのであるから、右各山林の売買による原告の収益は平成二年七月期に算入すべきものであると解される。

よって、原告の前記主張は採用することができない。

四  粟生間谷の土地等の売買契約に係る違約金の帰属について

1  乙第三一、三二号証によれば、粟生間谷の土地等につき、売主を田端ほか一名、買主名義を「寺嶋貞夫」として、平成元年一〇月二〇日、代金九四八〇万円で売買契約が締結され、同日、買主から手付金として九四八万円が売主に支払われたこと、右契約には、売主は受領した手付金の倍額に相当する金員を買主に支払ってこの契約を解除することができる旨の約定があったこと、売主である田端らは、平成二年一月二九日、買主に対して右契約の解約を申し入れ、右約定に基づいて一八九六万円を買主に支払ったこと、その際、買主名義を「寺嶋貞夫」として右解約に関する合意書が作成されたことが認められる。

2  ところで、甲第五〇号証、乙第四一号証の3、第四二号証及び原告代表者尋問の結果によれば、前記手付金九四八万円は原告が支出したものであること、売主から支払われた前記一八九六万円は、平成二年一月三一日、原告の仮名預金口座である安藤清一名義の普通預金口座に入金されていること、右金員は同年二月二日に払い戻された上、そのうち一八〇〇万円が原告の当座預金口座に入金され、九六万円は安藤名義の別段預金口座に入金されたことがそれぞれ認められ、これらによれば、粟生間谷の土地等の実質上の買主は原告であって、右一八九六万円も原告が取得したものと認めることができる。この点に関し、甲第五〇号証には、これらの金員の処理については原告と寺嶋との間で精算済である旨の記載があるけれども、その具体的内容は何ら明らかにされておらず、右記載内容は信用することができない。

3  以上の事実によれば、売主から原告に支払われた金員のうち九四八万円については、平成二年七月期における原告の益金に含まれるものというべきである。

五  本件取消処分の適法性について

1  原告は、被告の職員による予告なしの訪問、調査理由の不告知及び原告の調査協力を無視した反面調査の実施等の点で被告の調査手続に違法があると主張する。しかしながら、反面調査の実施を含む質問検査権行使の範囲、程度、時期等については、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当であって、たとえ原告が主張するとおりの事実が存在したとしても、そのことから直ちに調査手続に違法があるということはできないし、原告代表者が本人尋問及び甲第五〇号証において述べるところによっても、本件における調査手続に社会通念上相当な限度を超える違法があったとは認められない。

2  原告が畑五四の山林を二億一九七六万五〇〇〇円で取得した上、昭和六二年一一月二五日、これをダイエー通商に代金二億六九一〇万円で売り渡したことは、前記二で認定したとおりであるところ、甲第五〇号証、乙第四二号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は、右譲渡利益金のうち四〇〇〇万円を、いわゆる借名預金口座である相互信用金庫天六支店の広瀬一也名義の普通預金口座に入金していながら、この売買取引を昭和六三年七月期の会計帳簿に記載せず、法人税の確定申告からも右譲渡利益を除外していたことが認められる。これらは、法人税法一二七条一項三号所定の取引の隠蔽、仮装に該当するものというべきである。この点につき、原告代表者は、本人尋問及び甲第五〇号証において、取引の事実を隠蔽、仮装する意図はなかった旨述べるけれども、前記二で認定した諸事情に照らし、信用することができない。

3  以上によれば、本件取消処分は適法である。

六  本件更正(一)、(二)の適法性について

1  原告は、本件更正(一)、(二)はいずれも更正の理由が付記されていない点において違法であると主張する。しかしながら、原告の昭和六三年七月期以降の青色申告の承認は、本件取消処分により平成四年三月三一日取り消されたものであり、かつ、本件取消処分が適法であることは、いずれも前述したとおりであって、そうすると、原告から提出された昭和六三年七月期以降の申告書はいずれも青色申告書以外の申告書とみなされる結果(法人税法一二七条一項)、本件更正(一)、(二)に更正の理由が付記されていなくても違法の問題を生じることはないというべきである(同法一三〇条二項参照)。よって、原告の右主張は採用することができない。

2  本件更正(一)

(一)  原告の昭和六三年七月期の所得金額は、原告の申告所得金額一三六万八七九四円(当事者間に争いがない。)に次の(1)、(2)の金額を加算した四五九八万三七九四円である。

(1) 畑五四の山林の譲渡利益 四二六一万五〇〇〇円

ダイエー通商から受領した代金二億六九一〇万円(前記二1(一))から取得原価二億一九七六万五〇〇〇円(同)及び仲介料六七二万円(甲第二五ないし二八号証)を控除した金額

(2) 畑一一、一五、一六の山林の譲渡利益 二〇〇万円

ダイエー通商から受領した代金一億八九三九万二〇〇〇円(前記二1(二))から取得原価一億八〇九一万九二〇〇円(同)及び仲介料六四七万二八〇〇円(甲第三〇、三一号証)を控除した金額

(二)  原告の昭和六三年七月期の土地譲渡利益金額は、次の(1)ないし(3)の合計額七九五一万八五四七円である。

(1) 箕面市白鳥一-三五〇-一の雑種地 三七八六万九四〇七円

乙第四四号証によれば、右雑種地の譲渡等に係る原告の土地譲渡利益金額は、被告主張のとおり、収益額五一五〇万円から、原価額一三二九万八一四〇円、法定の負債利子一九万九四七二円並びに法定の販売費及び一般管理費一三万二九八一円を控除した残額の三七八六万九四〇七円であると認められる。

(2) 畑五四の山林 三四六八万四〇〇〇円

ダイエー通商から受領した代金二億六九一〇万円(前記二1(一))から取得原価二億一九七六万五〇〇〇円(同)、法定の負債利子八七九万〇六〇〇円並びに法定の販売費及び一般管理費五八六万〇四〇〇円を控除した金額

(3) 畑一一、一五、一六の山林 六九六万五一四〇円

ダイエー通商から受領した代金一億八九三九万二〇〇〇円(前記二1(二))から取得原価一億八〇九一万九二〇〇円(同)、法定の負債利子九〇万四五九六円並びに法定の販売費及び一般管理費六〇万三〇六四円を控除した金額

(三)  そうすると、原告の昭和六三年七月期の法人税額等は別紙2-1、2-2のとおりとなり、その範囲内でされた本件更正(一)は適法である。

3  本件更正(二)

(一)  原告の平成二年七月期の所得金額は、原告の申告所得金額△八九二八万二〇九一円(当事者間に争いがない。)に次の(1)ないし(4)の金額を加算した三億四九八九万一〇〇九円である。

(1) 畑九の山林の譲渡利益 一億〇二八〇万円

ドリー産業から受領した代金三億七五七五万円(前記二1(三))から取得原価二億七二九五万円(同)を控除した金額

(2) 畑一〇、六〇の山林の譲渡利益 一億一四八四万円

ドリー産業から受領した代金三億一九〇〇万円(前記二1(四))から取得原価二億〇四一六万円(同)を控除した金額

(3) 白鳥地区の雑種地の譲渡利益 二億一二〇五万三一〇〇円

メディアスから受領した代金合計九億〇四八三万五〇〇〇円(前記三1)から取得原価合計六億七一九四万一九〇〇円(同)、支払遅延利息五四万円(乙第二八号証)及び仲介料二〇三〇万円(乙第四五、四六号証)を控除した金額

(4) 粟生間谷の土地等の売買契約に係る違約金 九四八万円(前記四)

(二)  原告の平成二年七月期の土地譲渡利益金額は、次の(1)ないし(4)の合計額四億三七六九万九一五三円である。

(1) 函館市深堀町の土地 四九六万三八〇〇円

被告の主張5(二)(1)の事実は当事者間に争いがなく、原告が平成二年五月三一日に有限会社緑町エステートに函館市深堀町の土地建物を売り渡したことによる土地譲渡利益金額は四九六万三八〇〇円となる。

(2) 畑九の山林 九八二五万〇八三三円

ドリー産業から受領した代金三億七五七五万円(前記二1(三))から取得原価二億七二九五万円(同)、法定の負債利子二七二万九五〇〇円並びに法定の販売費及び一般管理費一八一万九六六七円を控除した金額

(3) 畑一〇、六〇の山林 一億〇九七三万六〇〇〇円

ドリー産業から受領した代金三億一九〇〇万円(前記二1(四))から取得原価二億〇四一六万円(同)、法定の負債利子三〇六万二四〇〇円並びに法定の販売費及び一般管理費二〇四万一六〇〇円を控除した金額

(4) 白鳥地区の雑種地 二億二四七六万八五二〇円

メディアスから受領した代金合計九億〇四八三万五〇〇〇円(前記三1)から取得原価合計六億七一九四万一九〇〇円(同)、支払遅延利息五四万円(前記(一)(3))、法定の負債利子四五五万〇七四八円並びに法定の販売費及び一般管理費三〇三万三八三二円を控除した金額

(三)  そうすると、原告の平成二年七月期の法人税額等は別紙3-1、3-2のとおりとなり、その範囲内でされた本件更正(二)は適法である。

七  本件賦課決定(一)、(二)の適法性について

1  以上に認定した事実によれば、畑地区の山林の売買取引及び粟生間谷の土地等の売買契約に係る違約金については、原告は、これらの取引を会計帳簿に記載せず、仮名又は借名預金口座を利用し、また、真実と異なる契約書等を作成することにより、これらによる収益を隠蔽し、右収益を除外した法人税の確定申告書を提出したものと認められるから、国税通則法六八条一項所定の事由に該当するものというべきである。右隠蔽、仮装の意図を否定する原告代表者の供述及び甲第五〇号証の記載は、前記二、四で認定した諸事情に照らし、信用することができない。

2  したがって、右各取引に係る部分の税額を計算の基礎として重加算税を賦課し、その対象とされた税額以外の税額につき過少申告加算税を賦課した本件賦課決定(一)、(二)はいずれも適法ということができる(なお、原告は、本件賦課決定(二)につき同法六五条四項所定の正当な理由が存在する旨主張するけれども、右主張は、これを裏付ける具体的事実の主張、立証がなく、採用することができない。)。

八  結論

以上のとおり、本件取消処分、本件更正(一)、(二)及び本件賦課決定(一)、(二)はいずれも適法であって、原告の本件各請求はいずれも理由がない。よって、本件各請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 石井寛明 裁判官 石丸将利)

(別紙1) 課税の経緯

<省略>

(別紙2-1)

法人税の金額(63年7月期)

<省略>

<省略>

<省略>

(別紙2-2)

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(63年7月期)

<省略>

(別紙3-1)

法人税の金額(2年7月期)

<省略>

<省略>

<省略>

(別紙3-2)

超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額等の計算(2年7月期)

<省略>

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